旅べえ > エッセイ/旅論/ウェブ評 >

←後 / 前→

異常事態への対応に弱い便

成田発福岡行LCCの某航空会社のフライトが大分に着陸
8月16日、成田発福岡行LCCの某航空会社のフライトは、福岡の悪天候のため、大分空港に着陸した。

着陸に先立って機長からそのことが説明され、福岡に向かうための臨時便が運行されないことも知らされた。着陸は20時15分頃ではなかったかと思う。その後、機外に出るまで随分待たされた。到着ロビーでも何の案内もない。ほかの乗客に従って航空会社のカウンターに向かうとスタッフがいたが、しばらく公式の説明はなく、乗客と押し問答になっていた。中部発福岡行の同じ航空会社のフライトも大分空港に着陸したようで、200人程度の乗客がいたことになると思う。

しばらくして、ようやく提示されたのが、10社程度のタクシー会社の電話番号と、「乗客は各自電話をかけてタクシーを呼び、福岡に向かってほしい。福岡空港までのタクシー料金は航空会社が負担するが、一旦立て替えてほしい。」という説明であった。ここで、タクシー会社の保有台数を考えると乗客に見合ったタクシーが確保されているとは考えられないという趣旨の抗議と、怒号が飛び交った。確かに提示された電話番号に電話をかけても繋がらないことが多く、繋がっても空車がないという説明がほとんどのようであった。スタッフは、乗客からの意見に対し、度々成田空港に電話をかけて責任者の判断を仰いで回答していた。この時点で、家路を急ぐ乗客はタクシー乗場に向かったようであった。

スタッフは、当初、航空会社は福岡空港までの輸送に責任があるため、タクシー料金を負担するのは福岡空港までであり、高速道路料金は含まないと説明していたが、乗客との交渉の結果、福岡空港までのタクシー料金に7,000円を足した額まで航空会社が負担することになり、また、高速道路料金も含まれることになった。ここまで確認した上で、既に長蛇の列ができていたタクシー乗場に向かった。

機転を利かせてタクシーを確保
タクシーは、全く来ないというわけではなかったが、乗客の数を考えると見通しは明るくなかった。大分空港は、地域振興のため、大分や別府から離れた国東半島の先に建設されており、地元には大手のタクシー会社はないのだ。また、福岡に向かったタクシーの戻りを待つわけにはいかない。

ここで、機転を利かせることができた。電話番号を提示されたタクシー会社は、国東半島の会社だ。しかし、大手のタクシー会社は大分や別府にある。地元のタクシー会社で捌くことができないのなら、次に近い別府のタクシー会社に電話をかけてみるべきだと考えたのだ。大分空港からの電話だと知ると最初は驚いていたが、事情を説明すると納得してもらうことができた。ただし、最初のタクシー会社では到着までに1時間を要すると説明されたため、判断を保留した。2番目のタクシー会社では40分で到着するとの説明であり、手配してもらうことにした。21時45分頃であった。そして、タクシーを待つ人の列から外れた。

その後、しばらくはタクシーを待つ人の列が前に進んでいたため、早まったかと思ったが、そのうちに列は進まなくなった。そして、電話をかけてから30分後には別府からのタクシーが到着した。そこで、列に並んでいた時に一言二言交わしていた男性二人を誘い、福岡に向かった。福岡に到着した時には日付が変わっていた。2番目にタクシーを降りたため、タクシー料金を立て替える必要さえなかった。迎車料金は不要とされたが、降車時点で55,000円程度になっていた。

航空会社が講じるべきであった対処策
最後まで地元のタクシーを待っていた乗客はいつ福岡に戻ることができたのであろうかと思いやられる。また、航空会社は、宿泊を希望する乗客には上限を定めた上で宿泊料金を負担するとともに、翌日、福岡に向かう臨時便を運行することにしていたから、相当な出費になったと思う。ここで、航空会社が講じるべきであった対処策について考えてみたい。

まず、当日は臨時便を運行しないと決めた時点から、陸路輸送によって当日中に乗客に帰宅してもらう方法を探るために最大限の努力をしなければならなかったはずだ。大型バスをチャーターすることができないのならば、次の大量輸送手段は鉄道だ。地元、別府、場合によっては大分のタクシー、運転手付きレンタカーなどを航空会社の責任で確保して相乗りで乗ってもらい、最寄りの杵築駅との間をピストン輸送するべきであったと思う。指定席を確保することができるかどうかという問題はあるものの、それによって多くの乗客が22時6分発の博多行特別急行列車に乗ることができたのではないか。そして、乗ることのできなかった乗客には、航空会社の責任で確保したタクシーに相乗りで乗ってもらい、福岡の自宅に送り届けることによって、乗客にも満足してもらい、航空会社の出費も抑えることができたはずだ。

異常事態に対して、乗客のニーズを迅速にできる限り汲み取って対応する必要があり、そのためのマニュアルの整備が望まれるであろう。

(この提案は既に航空会社に対して行い、一定の回答があったため、航空会社名は明示しないことにした。)

(2015年9月12日執筆、2024年8月21日掲載)

旅べえ > エッセイ/旅論/ウェブ評 >

←後 / 前→