米国大統領選挙でジョー・バイデン前副大統領が当選
1か月前に行われた米国大統領選挙は接戦であった。選挙人538人のうち、民主党のジョー・バイデン前副大統領が253人を、共和党のドナルド・トランプ大統領が214人を獲得した後、ペンシルヴェニア州、ジョージア州、アリゾナ州、ノースカロライナ州、ネバダ州、アラスカ州の勝敗が2〜3日間決まらなかった。その後、バイデンさんのペンシルヴェニア州勝利が決まり、次期大統領当選が決まった。
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20年振りの米国大統領選挙の混乱
その前後にトランプさんが取った言動がアメリカ合衆国の常識を大きく外れたものであった。郵便投票を始めとして投票に不正があるため、結果を認めないというものだ。
振り返れば、共和党のジョージ・ブッシュ・テクサス州知事(当時)と民主党のアル・ゴア副大統領(同)が争った2000年の大統領選挙以来の接戦となった。当時、特に接戦であったフロリダ州において、手作業再集計を行うと結果は覆る可能性があった。しかし、連邦最高裁判所が再集計を禁じる判決を下すと、ゴアさんは国の分断を回避するために敗北宣言を行った。
集計のたびに得票数が変わり、明らかに党派性を持つ裁判官が選挙の行方を左右する米国大統領選挙の実態には呆れるが、それはともかく、ゴアさんの取った言動がこれまでの常識であった。
それに対し、トランプさんは、選挙前、郵便投票が不正の温床になるということ以外に具体的な根拠を示さず、自分が敗れるはずはないから、もし選挙で自分が敗れれば不正があったということだから認めないと予告した。そして、開票後、具体的な証拠を示さず、予告通り不正があったという主張を始めた。
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世論と日本の保守評論家の愚論
トランプさんの言動は、あまりにも幼稚だ。とても認められるものではなく、アメリカ合衆国を分断に導くものだと思う。共和党支持者のかなり多くの層がトランプさんの言動を支持するという構図は意外だ。トランプさんを支持するかどうかではなく、トランプさんの主張が論理的であるかどうかに基づいて行動を起こしてもらいたいものだ。バイデンさんは大統領就任後もこれらの層には手こずらされるであろう。
アメリカ合衆国の保守派とリベラル派の概念は、日本の保守派とリベラル派の概念とは次元の異なるものだ。それにも関わらず、日本の保守評論家の中には、選挙結果を認めないトランプさんの言動を、当然の権利の行使として正当化する人が多かったように思う。中には、トランプさんは開票前から不正に言及していたため、信用するに値するという説得力のない説明もあった。やはり、トランプさんを支持するかどうかではなく、トランプさんの主張が論理的であるかどうかに基づいて評論を行ってもらいたいものだ。
(2020年12月6日執筆、2024年8月21日掲載)
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