■ワシントンDCのダレス空港へは、宵に到着した。そして、シカゴに向かう飛行機に乗り合わせオヘア空港で行動をともにした若い日本人女性と一緒にタクシーに乗って市内に入った。当地からロンドンに向かい、連合王国に半年間程度滞在する予定だという。また、合衆国ではミシガン州に滞在した経験があるとのことで、冬の厳しさを強調していた。タクシーの運転手によると前日に初雪が降ったとのことで、正に冬が訪れようとしていた。
■渡航後1週間は、事前に手配を依頼しておいたホテルに泊まることにしていた。メトロ(地下鉄)のデュポン・サークル駅の北にありニューハンプシャー・アヴェニューに面したザ・カーライル・スイーツだ。チェックインを済ませると、職場や実家などに無事に到着したことを伝えた。14時間の時差がある日本では渡航翌日の午前になっていた。
■渡航直後は様々な手続きが必要なので、宿泊先はダウンタウンに確保すると便利だ。デュポン・サークル駅はダウンタウンの便利な場所にある。ただ、タクシーで乗りつけたため、ホテルが駅の近くにあるのかどうか分からない。そのため、不安から腰が重くなってしまった。渡航2日目のブランチ(昼食兼用の遅い朝食)をホテルで済ませると、地番を確かめながらデュポン・サークルの方に向かって歩いていった。すると、5分程度でデュポン・サークル駅に到着した。もっと早く行動を始めていればよかったと後悔した。
■その後、アパートメントを探すという作業に取り掛かった。深夜にならないと眠ることができず、翌日に朝寝坊をするなどという時差呆けに悩まされながらの作業であった。まず、書店で売っているワシントン・ポストを買ってアパートメントの情報を入手しようとした。アパートメントのレンタルの情報は豊富であったが、情報が多すぎて使いこなすことは難しそうであった。そこで、不動産会社を利用することができないかと思い、デュポン・サークル駅の西にありエンバシ・ロウ(大使館通り)と呼ばれているマサチューセッツ・アヴェニューに面した日本大使館に有益な情報がないか確かめるためを訪ねることにした。デュポン・サークル駅からは歩いていくことのできる距離だ。しかし、不思議なことに門が閉まっていた。ドアフォンを押して大使館内の人と話してみると、ヴェテランズ・デイ(退役軍人記念日)のため祝日であることが分かった。ガイドブックではヴェテランズ・デイは翌日とされていたが、土曜日に当たっていたため振替休日になっていたのであろうか。いずれにしても、翌週にならないと大使館で情報を入手することはできないと分かった。
■仕方なくデュポン・サークルの方に戻って、コネティカット・アヴェニューに面したアパートメント・サーチという不動産会社に相談することにした。そこでは情報のデイタベイス化が進んでおり、パーソナル・コンピューターのディスプレイに物件が画像付きで紹介されていた。デュポン・サークルなどのワシントンDC中心部はレンタル料金が高い上に物件が品薄であり、アーリントンなどのヴァージニア州北部やベセスダなどのメリランド州南部が主な選定対象になるようだ。
■相対的に安価なアンファーニシュト(家具なし)は一般に6か月未満のレンタルが難しいと言われているが、ファーニシュト(家具付き)についても6か月未満のレンタルを認めている適当な物件はなかなか見つからなかった。6か月レンタルすることも考えたが、メリランド州のチェヴィチェイスに月単位でレンタルを認めているアパートメントを探し出してもらった。
■翌日、メトロに乗ってフレンドシップ・ハイツ駅に行き、紹介してもらったアパートメントを訪ねた。そして、部屋、周辺の環境とも満足したため仮契約することとし、セキュリティ・デポジット(保証金)などを支払った。
■フレンドシップ・ハイツ駅は、ワシントンDC中心部のメトロ・センター駅から北西に向かうメトロのレッド・ラインの列車に乗って7番目の駅であり、ちょうどワシントンDCとメリランド州の境界線上に位置する。アパートメントのある駅の北側はメリランド州であり、モントゴメリ・カウンティ(郡)のチェヴィチェイスが広がっている。駅前にはショッピング・モールが展開されており、周辺は全米でも屈指の高級住宅街とのことだ。
■アパートメントは、駅からウィスコンシン・アヴェニューを北に3分程度歩いた場所にある。改装してあるためか、1964年築という割には古く見えなかった。
■部屋は最上階の16階(13階が欠番であるため実際には15階)にあり、ファーニシュトのステューディオ(ベッド・ルームが独立していないアパートメント)だ。合衆国では、寝室が独立して初めて1ベッド・ルーム、2ベッド・ルームズなどと呼ぶようだ。ステューディオとは言っても、日本では考えられないぐらいの広さだ。また、ザ・カーライル・スイーツと同じぐらい清楚であるように思われた。南側には大きなバルコニが張り出している。そして、ベッド、寝室用品、バス用品、洗面用品、テイブル、ダイニング用品、冷蔵庫、台所用品、クローゼット、照明スタンド、テレヴィジョン、電話機などが備え付けられており、セントラル・ヒーティングになっている。ファーニシュトという形式は、毎日のベッド・メイキングがないだけでホテル暮らしと大きく変わらないと言ってよいであろう。生活を始めるための準備は最小限でよく、合衆国での生活を順調に軌道に乗せていくことができそうであった。
■レンタル料金は、レンタル期間が3か月以上6か月未満の場合、光熱費込で1か月1,040ドル(USドル、米国ドル、1ドルは約104円)と、リーズナブルであるように思われた。
■仮契約の3日後の午後になって、審査が終わり入居が可能になったという回答があった。そこで、ホテルの残りの予約をキャンセルして、チェックアウトすることにした。手数料なしでキャンセルすることができ、5日半分の宿泊料金を支払った。宿泊料金は1日当たり91.90ドルと決して安くはなく、早目にアパートメントに移りたかったのだ。
■入国時と同じ荷物を抱えてタクシーに乗り、アパートメントに向かった。そして、日割計算をした当月分のレンタル料金を管理室で支払って晴れて入居となり、合衆国での生活が始まった。
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